こんにちは!ワタルです!
以前記載した日経平均とドル円の為替レートが連動する理由を解説するという記事を書いたのですが、早速反響がありまして、今度は以下の質問を頂きました。
「ワタルさん米国人や外人が日経平均に投資する際に為替ヘッジを行う理論については分かりました。ではワタルさんが紹介している新興国株投資を行う際にも為替ヘッジが必要なのですか?」
という質問を頂きました。いやー有難いです。皆さん、どんどん質問とか下さいね!やる気わいてくるので!
日本のように日本株と日本円が異なる動きをする場合は、為替ヘッジを行う必要がありますが、では新興国株と新興国通貨はどのような動きをするのでしょうか?
同じ動きをするのであれば為替ヘッジをする必要性はありませんし、反対の動きをするのであれば為替ヘッジを行うことも考えないといけないですよね。
今回はこの質問について総合商社で元為替トレーダーの管理人の私の視点から紐解いていきたいと思います。
Contents
新興国株投資をする際の外国人投資家の行動
例えば私達外国人が新興国の株式に投資する場合、その株は現地通貨建でしか購入できないので、私達外国人は日本円を売って現地通貨を購入してから現地の株式を購入します。
いやいや私は楽天証券やSBI証券で東南アジアの株を購入する時に、そんなことしませんでしたよ!
という方もいらっしゃると思いますが、それは裏で楽天やSBIが調達を行っています。
その為、新興国が株価が上昇する場合には、当該国の通貨も上昇します。
その為、確りと上昇していく国の株を購入すれば、それにつれて為替レートも上昇していくので一挙両得となるのです。
もし、このような状況で為替ヘッジを行うと、新興国の高い金利分がマイナスになるので折角の投資収益が大きく凹みます。
以下図を用いて説明しますと、新興国株を購入するときに新興国通貨を買い、その新興国通貨で新興国株を買うと同時に、売却予定時の1年後に先足で新興国通貨の売を入れます。
1年後に新興国株が15%上昇したとします。一方、先足で売ってた新興国通貨が10%という高金利通貨であるとすると、10%分の金利支払いが発生します。
すると、最終的な損益は株式上昇15% – 金利10% =5%に凹んでしまいます。

為替ヘッジを行わなかった場合、株式投資の15%の利益に、更に為替の通貨上昇益を掛け合わせた利益が最終的な利益になります。

基本的に株が上がるのであれば為替レートも上がり、株が下がるのであれば為替レートもさがるのですが、
一点気を付けなければいけないことがあります、それは国際収支です。以下で詳しく説明します。
国際収支と為替レート
私は総合商社で元為替トレーダーだったこともあり、為替の決定要因については熟知しています。
為替市場にはプレイヤーが大きく分けて二つ存在していて、輸入決済や輸出決済、証券投資や直接投資といった実需取引に基ずく取引と、
ヘッジファンドや銀行のディーラーや総合商社やトレーディング会社の自己勘定トレーデシングです。
前者を実需取引、後者をスペック取引とします。
スペック取引
後者が実際の取引の90%を占めますが、この取引は買ったら売らなければいけませんし、売ったのであれば買い戻さなければいけません。
つまり、ネットネットでみると0になります。
いくら取引量が多くてもネットネットで0なのであれば、長期的にみたら為替市場に与えるインパクトは0です。
ただ短中期的にみるとスペックポジションがLongに傾いて通貨が上昇したり、Shortに傾いて通貨が下落したりします。
しかし、この動きは株が上昇、または下落する向きと一致します。
つまり、投資しようとしている国で良い事象が発生すると株も買われ通貨も買われます。一方、投資しようとしている国で悪い事象が発生すると株も売られ、通貨も売られます。
この方向性は前回説明したとおり、特殊な通貨円以外は一致します。東日本大震災や北朝鮮からミサイル打ち込まれて買われる当事者国通貨は世界中で円だけです。
つまり、このスペック取引の要因で、わざわざヘッジする必要はないのです。
実需取引
一方全体の1割しかない実需取引は買い切り、売り切りとなる為、ネットで為替市場に影響を及ぼします。
ドル円のレートが戦後の300円台から現在の100円近辺のレートに落ちてきたのは、この実需取引の積み重ねが要因です。
つまり昔は貿易取引で常に黒字を出し続け、今は海外に投資した配当金や債券の利子を積み重ねた所得収支で日本は一時の例外を除いて基本的に経常収支黒字国です。
つまり外貨を外から稼いでいるので、稼いだ外貨を自国に引き戻す時に円買が発生するので、円高圧力が常にかかるため、ドル/円が下落していったわけです。
この実需取引は経常収支と金融収支を合わせた国際収支の合計で表すことが出来ます。
国際収支の内訳
国際収支は経常収支と金融収支に分けることが出来ます。
この二つを合わせて、最終的にその新興国がいくら海外からお金を引っ張ってきて、自国通貨買が発生しているか計測することが出来ます。
経常収支
経常収支の主な構成要素は以下になります。
貿易収支
モノの輸出と輸入の差額ですね。日本は今はトントンといった感じです。
所得収支
これは海外の株式の配当金や債券の利子などですね
サービス収支
サービスの収支ですね。旅行や運送サービス、金融サービスなどです。
経常収支移転
これは小さいので無視してよいのですが、政府による食糧援助や医療援助等です。
基本的に大きいのは貿易収支と所得収支ですね。
新興国は海外からの投資を受け入れているので、配当や利子を支払う立場の国が多いので所得収支はマイナスになりがちです。
金融収支
次に金融収支です。金融収支は二つに分けることが出来ます。
直接投資
これは海外から工場を作ったり、生産設備を作って貰うという投資を受け入れることです。
基本的に新興国は直接投資は投資を受け入れている側なのでプラスです。
証券投資
これは、分かり易いですね、株式や債券投資のことです。
私達が新興国株を購入するのであれば、証券投資はプラスということですね。
国際収支と為替レートのまとめ
最初に新興国株が上昇するというのは、以下の⑥がプラスであることを意味します。
①貿易収支+②所得収支+③サービス収支+④経常収支移転+⑤直接投資+⑥証券投資
そして⑤は上述の通り新興国は基本的にプラスです。一方②は新興国は配当と金利を支払う立場なので基本的にマイナスです。
更に③と④は非常に小さいことが多いので、プラスのものを赤、マイナスのものを青とすると以下のように簡素化できます。
①貿易収支+②所得収支+⑤直接投資+⑥証券投資
つまりこの上記式の合計が正であれば、為替と株は同じ方向に動くので、為替ヘッジを行う必要はありません。
一方、貿易収支が大きくマイナスのような要因で、この式の合計が負となれば、為替と株が違う方向に動く確率があるので、為替ヘッジを行うことも考慮にいればければいけません。
然し、当然最初に述べました通り、金利を支払わなければいけないので、投資損益は大きく凹みます。
国際収支と為替のまとめ
今までの考察で、国際収支がプラスの場合は為替と株が同じ方向に動く確度が高いので、為替ヘッジを行う必要はないことが分かりました。
寧ろ、為替ヘッジを行うと新興国通貨の高金利を支払わなければならない為、大幅に投資損益が毀損されてしまいますので、おすすめしません。
また仮に国際収支がマイナスの場合は、投資しようとしている新興国通貨の金利次第ですが、為替ヘッジを行うことも選択肢にいれてもいいかもしれません。
管理人おすすめの新興国はどうなのか?
このブログを通して、おすすめしている新興国はイランなのですがイランの国際収支はどうでしょうか。
この後、株式投資を中心とした証券投資や直接投資は増加していくことを見込んでいますので、経常収支が黒字であれば為替はイランリアル高になっていくことが見込まれます。
ではイランの経常収支をみてみましょう。

経常収支が一貫してプラスなので、問題なく株と為替が同じレートで動いていくことが想定されます。
つまり為替ヘッジは行わず、イラン株に投資することにより、株の値上がり益と通貨イランリアルの上昇益をダブルで見込めるということを意味します。
まあ、もともとイランリアルをヘッジする手法などないのですが、、寧ろ行わない方が良いということです。
魅力的な新興国のファンドについてはランキングにまとめていますのでご覧いただければと思います。